やくたたずの恋
 娘でも、父親の跡を継いでいる議員はたくさんいると言うのに。雛子の父はその事実を認めようとはせず、ひたすら男児の誕生を心待ちにしていたのだ。
 娘一人しか生めなかった母も、その娘である自分も、この父にとっては「役立たず」なのだ。父にとっては、それが事実。西から太陽が昇るようなことがあっても、父は自分の中の事実を買えないだろう。
 雛子は苦し紛れで、卑屈な笑顔を見せる。彼女が放つ重い気配を吹き飛ばすように、影山社長が、はははは! と大きな笑い声を上げた。
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