やくたたずの恋
「星野があの子に夢中になってくれれば、私は離婚できる。そして、私はあなたと結婚できる」
志帆とは思えない言葉を、志帆が吐く。
「そうは上手くいかねーよ」
恭平が煙草を外し、はぁ、と煙を押し出した。その煙をも愛するように、志帆はにっこりと微笑んだ。
「大丈夫よ。あんな健気な子を、星野が放っておけるはずがないもの」
そうだろうか? 恭平は志帆の言葉に、疑問を覚えた。
星野が志帆を見初めたのは、それは志帆だったからだ。あのOB会で志帆とダンスをしていた時、ずっと星野が志帆を見ていたのを覚えている。その視線には、羨望や恍惚を混ぜ合わせた、どろどろの執着が含まれていたというのに。
星野が志帆を選んだのは、彼女が健気だったからではない。志帆が志帆だったからだ。それ以上の理由はない。
星野は結果として志帆を「買い」、妻とした。だからといって、彼女を邪険にはしていない。大切な宝物のように、肌身離さず自慢げに持ち歩き、大事に扱っていた。お陰で志帆は、誰もが羨む「うら若き社長夫人」になったのだ。
志帆とは思えない言葉を、志帆が吐く。
「そうは上手くいかねーよ」
恭平が煙草を外し、はぁ、と煙を押し出した。その煙をも愛するように、志帆はにっこりと微笑んだ。
「大丈夫よ。あんな健気な子を、星野が放っておけるはずがないもの」
そうだろうか? 恭平は志帆の言葉に、疑問を覚えた。
星野が志帆を見初めたのは、それは志帆だったからだ。あのOB会で志帆とダンスをしていた時、ずっと星野が志帆を見ていたのを覚えている。その視線には、羨望や恍惚を混ぜ合わせた、どろどろの執着が含まれていたというのに。
星野が志帆を選んだのは、彼女が健気だったからではない。志帆が志帆だったからだ。それ以上の理由はない。
星野は結果として志帆を「買い」、妻とした。だからといって、彼女を邪険にはしていない。大切な宝物のように、肌身離さず自慢げに持ち歩き、大事に扱っていた。お陰で志帆は、誰もが羨む「うら若き社長夫人」になったのだ。