やくたたずの恋
「いいじゃないか。女が子どもを生むからこそ、この世の繁栄があるってもんですよ。女ってだけで、立派なもんだ!」
 影山社長は自分の言葉に納得するように、うんうんと頷いている。雛子の父が苦々しい表情を向けていることなど、お構いなしだ。
 雛子は、こんな影山社長の大らかな雰囲気が好きだった。恭平が言った通り、「チビデブハゲ」の三重苦の持ち主ではあるが、明るくて、とても話が面白い。
 そして、大口の貸し出しをメインとする、国内有数の金融会社『影山興業』の社長であるにもかかわらず、偉そうなところは一つもない。
< 32 / 464 >

この作品をシェア

pagetop