やくたたずの恋
「訊いていいか?」
恭平は志帆の手を振り払い、尋ねる。行き場をなくした両手を持ち上げたままで、志帆は「何?」と首を傾げた。
「お前……星野さんのことを、いまだに好きになれないのか?」
「……何言ってるの? なれる訳ないじゃない! あの人は、私を金で買ったのよ!? そこに好きとか愛とか、そんなものがある訳ないでしょう!」
「でも、結婚して十年以上も経つんだぜ? それだけの間、一緒に暮らしても、親愛の情みたいなもんも湧かなかった、ってことか?」
「そうよ」
きっぱりと言い放つ志帆の表情。その冷たさを感じながら、恭平は小さな声で尋ねた。
「好きになる努力もしなかったのか?」
「何よ、それ。そんなこと、あの男になんて、わざわざする必要なんてないでしょう?」
恭平は志帆の手を振り払い、尋ねる。行き場をなくした両手を持ち上げたままで、志帆は「何?」と首を傾げた。
「お前……星野さんのことを、いまだに好きになれないのか?」
「……何言ってるの? なれる訳ないじゃない! あの人は、私を金で買ったのよ!? そこに好きとか愛とか、そんなものがある訳ないでしょう!」
「でも、結婚して十年以上も経つんだぜ? それだけの間、一緒に暮らしても、親愛の情みたいなもんも湧かなかった、ってことか?」
「そうよ」
きっぱりと言い放つ志帆の表情。その冷たさを感じながら、恭平は小さな声で尋ねた。
「好きになる努力もしなかったのか?」
「何よ、それ。そんなこと、あの男になんて、わざわざする必要なんてないでしょう?」