やくたたずの恋
雛子が一歩迫れば、恭平は一歩後ずさる。お互いに摺り足を続け、雛子はついに恭平を壁際へと追い込んだ。マタドールに迫られた牛ならば角を向けるだろうが、今の恭平にはそれがない。赤いマントならぬ赤いマグカップが彼の弱気を刺激して、マタドールに射止められるのを待つ、臆病な牛にさせていた。
「ね? だからこのカップ、使ってください! ペアのマグカップなんて、結婚すれば、ぜーんぜん変じゃなくなりますよ!」
「そうよねぇ。結婚するのが一番手っ取り早いんじゃなーい?」
二人の間に入り込むように、悦子がソファから間延びした声を上げる。
「ペアのマグカップっていう、今の環境に合わないものがある。だから結婚して環境から変えれば、ペアのマグカップも自然なものになる。それはなかなかの判断よ、ヒヨコちゃん」
「ですよねー」
賛同者を得て、雛子は嬉しそうに飛び跳ねた。キャピキャピとした若さ溢れる雰囲気に耐えきれず、恭平の怒りが一気にこみ上げていく。
「うるせぇ、貧乳!」
壁に背をつけたままで怒鳴る恭平を、雛子は恨めしそうに見た。
「ね? だからこのカップ、使ってください! ペアのマグカップなんて、結婚すれば、ぜーんぜん変じゃなくなりますよ!」
「そうよねぇ。結婚するのが一番手っ取り早いんじゃなーい?」
二人の間に入り込むように、悦子がソファから間延びした声を上げる。
「ペアのマグカップっていう、今の環境に合わないものがある。だから結婚して環境から変えれば、ペアのマグカップも自然なものになる。それはなかなかの判断よ、ヒヨコちゃん」
「ですよねー」
賛同者を得て、雛子は嬉しそうに飛び跳ねた。キャピキャピとした若さ溢れる雰囲気に耐えきれず、恭平の怒りが一気にこみ上げていく。
「うるせぇ、貧乳!」
壁に背をつけたままで怒鳴る恭平を、雛子は恨めしそうに見た。