やくたたずの恋
「大体、男ってのは口ばっかりで無能なヤツも多くてねぇ。うちだって、あのバカ息子一人しかいないもんですから、雛子ちゃんみたいな可愛いお嬢さんがいるのは、羨ましいもんですよ」
 そこまで言うと、影山社長は「あ、そうだ」と雛子へ目を遣った。
「雛子ちゃんは、そのバカ息子に会いに行っていたらしいじゃないか」
 そうでした。影山社長のハゲ頭に見惚れていたせいで、すっかり忘れていたが、そうでした。
「あ……はい」
 曖昧な返事をする雛子へと、影山社長はソファから身を乗り出した。
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