やくたたずの恋
志帆と二人で生きる道は、彼女が星野の妻となったことによって断たれてしまった。不可逆な過去と、不変の現在。そこに留まってはいけない。お互いに美しく幸せに生きるには、未来を少しでも良い方向へと導くしかないのだ。
だが志帆と恭平は、その努力を怠ってしまった。二人で寄り添っていた、あの12年前の時の中で立ち止まりながら。
そんな彼の目の前に今、幸せへと導いてくれるヒヨコが現れてしまった。黄金の産毛をふわふわと弾ませ、ピヨピヨと喚いている。自分についてこい、と必死に伝えるように。
うるさい。黙れ。恭平は叫ぶが、ヒヨコは鳴き止まない。そりゃそうだ。あの明るいぬくもりを持った彼女を、心から拒否している訳ではないのだから。
ヒヨコの姿が、可愛らしい彼女の姿に変わる。さっきまで小さな翼だったものが、白く細い腕へと変化し、こちらへと差し出される。
それに手を伸ばしそうになっている自分がいることに、恭平は気づいていた。
だが志帆と恭平は、その努力を怠ってしまった。二人で寄り添っていた、あの12年前の時の中で立ち止まりながら。
そんな彼の目の前に今、幸せへと導いてくれるヒヨコが現れてしまった。黄金の産毛をふわふわと弾ませ、ピヨピヨと喚いている。自分についてこい、と必死に伝えるように。
うるさい。黙れ。恭平は叫ぶが、ヒヨコは鳴き止まない。そりゃそうだ。あの明るいぬくもりを持った彼女を、心から拒否している訳ではないのだから。
ヒヨコの姿が、可愛らしい彼女の姿に変わる。さっきまで小さな翼だったものが、白く細い腕へと変化し、こちらへと差し出される。
それに手を伸ばしそうになっている自分がいることに、恭平は気づいていた。