やくたたずの恋
恐怖を乗り越えるには、どうしたらいい? その恐怖を、別の感情で上書きすればいい。
志帆の自問自答は、12年前に星野と結婚した後より、ずっと続いている。恭平を失う恐怖。それを覆い隠すために、憎しみを滴らせてきたというのに。
ならば、もっと憎しみを。自分から目を離そうとしているこの男と、自分の代役であるこの女に、もっと憎しみを。
「あなたが、敦也くんのその依頼を引き受けるなら、私、星野とダンスを踊ってもいいわ」
「……志帆!」
恭平は雛子を自分の背後へと押し込み、志帆の前に出た。その表情には、祈りの気持ちが浮かんでいる。
……頼む。これ以上、この子を巻き込むな。
渇きを募らせ、雨乞いをする。敬虔な農民に似た恭平の顔を、志帆はやっとのことで見た。だが彼女の瞳の中には、彼はいない。自分以外の女へと興味を向ける男を、愛しい男として認めたくはなかったのだ。
「あら。恭平、どうしたの? オプションは、女の子本人の同意があれば可能なんでしょ? ならば、敦也くんが雛子ちゃんにオプションを求めたっていいんじゃない?」
「その件については、俺から敦也に断ったはずだ」
「何を言ってるの? オプションのことは、客と女の子との間の問題でしょ? あなたの意志なんて関係ないわよ。それとも……このお嬢ちゃんだけは、特別扱いするつもり?」
志帆の自問自答は、12年前に星野と結婚した後より、ずっと続いている。恭平を失う恐怖。それを覆い隠すために、憎しみを滴らせてきたというのに。
ならば、もっと憎しみを。自分から目を離そうとしているこの男と、自分の代役であるこの女に、もっと憎しみを。
「あなたが、敦也くんのその依頼を引き受けるなら、私、星野とダンスを踊ってもいいわ」
「……志帆!」
恭平は雛子を自分の背後へと押し込み、志帆の前に出た。その表情には、祈りの気持ちが浮かんでいる。
……頼む。これ以上、この子を巻き込むな。
渇きを募らせ、雨乞いをする。敬虔な農民に似た恭平の顔を、志帆はやっとのことで見た。だが彼女の瞳の中には、彼はいない。自分以外の女へと興味を向ける男を、愛しい男として認めたくはなかったのだ。
「あら。恭平、どうしたの? オプションは、女の子本人の同意があれば可能なんでしょ? ならば、敦也くんが雛子ちゃんにオプションを求めたっていいんじゃない?」
「その件については、俺から敦也に断ったはずだ」
「何を言ってるの? オプションのことは、客と女の子との間の問題でしょ? あなたの意志なんて関係ないわよ。それとも……このお嬢ちゃんだけは、特別扱いするつもり?」