やくたたずの恋
　恭平はふらふらと踊っている。さっきのダンスではなく、哀れな舞を一人で踊らされているのだ。誰にって？　もちろん雛子にだ。
　こんなガキに、なぜ踊らされるのか。なぜこんなに、この女へと手を伸ばそうとしているのか。
　ちらりと視線を上げれば、雛子の顔がそこまで来ている。近い。近づくな。いや、もっと近くにいてほしい。このままずっと。
「いや、ほら……この前も敦也のヤツ、お前にキスしようとしてたしさ。何て言うか……大体、お前は俺と結婚するつもりでここで働いてるんだから、敦也とキスとかナシだろ？　だってお前は……俺と結婚するつもりなんだからさー。それなのにまた、あいつにお前を派遣したら、キスどころかそれ以上のこともやられそうだし、それを俺は見てられねーっていうか……」
　そこまで言って、恭平はやっと気がついた。とんでもないことを口走ってしまったことに。
「きょ、恭平さん！　それってもしかして……やきもちですか？　私にキスしようとした敦也さんに、やきもちやいてるんですよね？」
　その通り。どこからどう考えても嫉妬だ。自分のものに、手を触れてほしくない。そんな子供じみた嫉妬だ。
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