やくたたずの恋
* * *
巨大なホテルの20階にある、セミスイート。シックな設えと、広いベッド。更に、シャンパンまでもが用意されている。
本来ならば「きゃー! 素敵なお部屋!」と、女子力を最大限に発揮して喜びたいところだが、今の雛子には無理だった。半ば強制的に、敦也によってここへと連れて来られた、という状況では。
「恭平からは聞いていないようだから、説明をするよ」
敦也は手を引いて、雛子を部屋の中央へと連れ出し、向き合った。
「『Office Camellia』で、女性をオプション付きでレンタルするって言うのは、客と本当の恋人同士になることなんだ」
はい、そうですか。空っぽな心と瞳のままで、雛子は小さく頷く。
「ただしそれは、女性の方に同意する気がなかったらできないことなんだ。この『オプション』で、何組かのカップルが誕生していてね、みんな幸せな結婚生活を送っていると恭平からも聞いているよ」
ほう。ふむふむ。それは興味深い。
雛子の脳は、もはやそんな安易な反応しかしなくなっている。