やくたたずの恋
「お陰で人妻になっちまった恋人を諦めきれなくって、12年間も引きずってたぐらいだからな」
「それ……自慢ですか?」
「自慢じゃねぇよ。後悔だ。それがあいつを不幸にしていた原因だって気づくのに、12年もかかったんだからな」
「だから……何ですか?」
悲しかった雛子の胸が、怒りの赤のペンキで塗り潰される。ここで志帆への想いを語られるなど、冗談じゃない。そんなことを聞くために、バスルームという名のシェルターから出てきた訳ではないのだ。
雛子は小さな体を膨らませて、腹立ちの気分を表す。巨大な山犬に対抗する子犬として、キャン、と勢いよく吠えた。
「そんなこと言って、結局は私に敦也さんと結婚しろって言うんでしょ!? 自分は志帆さんを好きだから、私を好きにはなれないって!」
「そんなことは言わねーよ。ご期待に添えず、悪かったな」
「じゃあ、ここに何しに来たんですか? 私の泣いてる顔を見に来たとか?」
「まぁ……それも悪くないけどな」
「……サイテー」
雛子は拳を作り、恭平の胸を連打する。ワン、ツー、右フック、左ストレート。雛子の拳の本気さに恭平は焦り、その腕を押さえつけた。
「それ……自慢ですか?」
「自慢じゃねぇよ。後悔だ。それがあいつを不幸にしていた原因だって気づくのに、12年もかかったんだからな」
「だから……何ですか?」
悲しかった雛子の胸が、怒りの赤のペンキで塗り潰される。ここで志帆への想いを語られるなど、冗談じゃない。そんなことを聞くために、バスルームという名のシェルターから出てきた訳ではないのだ。
雛子は小さな体を膨らませて、腹立ちの気分を表す。巨大な山犬に対抗する子犬として、キャン、と勢いよく吠えた。
「そんなこと言って、結局は私に敦也さんと結婚しろって言うんでしょ!? 自分は志帆さんを好きだから、私を好きにはなれないって!」
「そんなことは言わねーよ。ご期待に添えず、悪かったな」
「じゃあ、ここに何しに来たんですか? 私の泣いてる顔を見に来たとか?」
「まぁ……それも悪くないけどな」
「……サイテー」
雛子は拳を作り、恭平の胸を連打する。ワン、ツー、右フック、左ストレート。雛子の拳の本気さに恭平は焦り、その腕を押さえつけた。