やくたたずの恋
恥ずかしさと後悔がマーブル模様を描き、雛子の顔に赤い渦を作る。それを隠すように、雛子は恭平の胸に顔を埋めた。大胆なくせに恥じらいを隠せない雛子に、恭平は苦笑いしか出ない。
「お嬢さん。こんなおっさんの俺がお相手で、よろしいんでしょうかね?」
あえて軽さを装う恭平の問い掛けに、雛子は返事をしない。そして恭平も、それ以上何も話そうとしなかった。
恭平は、雛子の答えを待っているのだ。その気持ちが伝わってくればくるほど、雛子は口ごもってしまう。だが心の中では、はしたない自分がぐんぐんとスピードを上げ、全ての感情を引き離していく。
初心な雛子でも、「この続き」に何が待っているのかは、分かっている。しかもそれを求めてしまったのは、自分なのだ。
無言のままの恭平の胸に抱かれ、心臓がとくとくと早鐘を打ち始める。「はしたない雛子」は、いよいよ独走態勢に入り、ゴールテープを目前に捉えていた。
残りは100メートル……50、30……さぁ、10メートルを切った! 実況の声に後押しされるように、雛子は思わずこくんと頷いた。
「恭平さんが……いいです。恭平さんじゃなきゃ、嫌です……」
言ってしまった。だけどこれが、今の正直な思いだ。恥ずかしさとか、照れだとか、はしたなさとか。そんなものの先に、もっと大事な気持ちがあると知ってしまえば、それに屈服するしかない。
「お嬢さん。こんなおっさんの俺がお相手で、よろしいんでしょうかね?」
あえて軽さを装う恭平の問い掛けに、雛子は返事をしない。そして恭平も、それ以上何も話そうとしなかった。
恭平は、雛子の答えを待っているのだ。その気持ちが伝わってくればくるほど、雛子は口ごもってしまう。だが心の中では、はしたない自分がぐんぐんとスピードを上げ、全ての感情を引き離していく。
初心な雛子でも、「この続き」に何が待っているのかは、分かっている。しかもそれを求めてしまったのは、自分なのだ。
無言のままの恭平の胸に抱かれ、心臓がとくとくと早鐘を打ち始める。「はしたない雛子」は、いよいよ独走態勢に入り、ゴールテープを目前に捉えていた。
残りは100メートル……50、30……さぁ、10メートルを切った! 実況の声に後押しされるように、雛子は思わずこくんと頷いた。
「恭平さんが……いいです。恭平さんじゃなきゃ、嫌です……」
言ってしまった。だけどこれが、今の正直な思いだ。恥ずかしさとか、照れだとか、はしたなさとか。そんなものの先に、もっと大事な気持ちがあると知ってしまえば、それに屈服するしかない。