やくたたずの恋
 昨日の夜、恭平の指と唇は、雛子の体の至る所を撫でていた。初めてで、慣れない雛子の体を気遣って、丁寧に慎重に愛してくれた。それによって与えられた、心地よさと体のうねりは、今思い出しても体が反応してしまいそうになる。
 最終的に彼と一つになった時などは、頭の中が真っ白になり、どんなことをしていたのかさえ覚えていないほどだ。
 たぶん……変なことはしてないよね、私……。
 思い出せそうだが、思い出せない。いや、思い出したとしても、きっと恥ずかしくて映像にボカシが入るだろう。
 雛子は一人で赤面しながら、息を飲み込む。渇いた喉が、引っかかるように痛んだ。顔を歪めると、恭平が心配げな表情をして起き上がった。
「喉、痛いのか?」
「……そうですね。この部屋が乾燥してるのかも」
「違うだろ?」
 訳知り顔で恭平はニヤ、と笑い、雛子の唇を指先でつつく。
「お前、いい声を上げまくってたもんなー。可愛かったなー、昨日の雛子は! 『恭平さーん』って何度も叫んで、俺にしがみついたの、忘れたのか?」
「ちょ……ちょっと! そんなこと言わなくてもいいじゃないですか!」
「照れるなよ。そんな声だって、俺しか聞いてないんだから、別にいいだろ?」
「そっ……それは……そうですけど……」
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