やくたたずの恋
勝者としての誇りをいよいよ身につけながら、敦也はジャケットの内ポケットを弄った。白い封筒を取り出し、恭平へと手渡す。
「これ、渡しておくよ」
手に取った恭平が、封筒の裏書きを見た。そこには、敦也の父である『近藤商事』の社長の名前が書かれていた。
「今日の夜、父がパーティを開くんだ。その招待状だよ。そこで、僕と雛子ちゃんの、婚約を発表するつもりなんだ。ぜひお前に来てほしい」
「何で俺が、こんなパーティに行く必要があるんだ?」
「心の整理をつけてほしいからだよ。お前が志帆ちゃんにそうだったように、雛子ちゃんにも未練たらたらだったら、雛子ちゃんだって幸せにはなれないからね」
敦也の言葉は、おそらく彼の本心だった。雛子と自分が結ばれる姿を見せつけようとか、「ざまぁみろ!」といった悪意から出たものではない。だからこそ、面倒くさい。これが冗談なら、こっちだって最上級のくだらなさで返してやるのに。
恭平は煙草を咥えたまま、敦也の顔を見た。そこに浮かぶ、ほのかな哀れみの気持ちに、反吐が出そうだった。
「……ご祝儀は出さねぇぞ」
「要らないよ。お前のいろんな顔を見られただけで十分だ。大学時代から余裕綽々だったお前が……志帆ちゃんだけじゃなく、雛子ちゃんをも守ろうとした必死な様子が見られて、楽しかったからね」
「悪趣味だな。結婚した後、新妻に変な性癖を見せるなよ。ドS野郎」
敦也は肩を竦めて返事をし、くるりと回転して、ドアへと向かって歩き始める。
「これ、渡しておくよ」
手に取った恭平が、封筒の裏書きを見た。そこには、敦也の父である『近藤商事』の社長の名前が書かれていた。
「今日の夜、父がパーティを開くんだ。その招待状だよ。そこで、僕と雛子ちゃんの、婚約を発表するつもりなんだ。ぜひお前に来てほしい」
「何で俺が、こんなパーティに行く必要があるんだ?」
「心の整理をつけてほしいからだよ。お前が志帆ちゃんにそうだったように、雛子ちゃんにも未練たらたらだったら、雛子ちゃんだって幸せにはなれないからね」
敦也の言葉は、おそらく彼の本心だった。雛子と自分が結ばれる姿を見せつけようとか、「ざまぁみろ!」といった悪意から出たものではない。だからこそ、面倒くさい。これが冗談なら、こっちだって最上級のくだらなさで返してやるのに。
恭平は煙草を咥えたまま、敦也の顔を見た。そこに浮かぶ、ほのかな哀れみの気持ちに、反吐が出そうだった。
「……ご祝儀は出さねぇぞ」
「要らないよ。お前のいろんな顔を見られただけで十分だ。大学時代から余裕綽々だったお前が……志帆ちゃんだけじゃなく、雛子ちゃんをも守ろうとした必死な様子が見られて、楽しかったからね」
「悪趣味だな。結婚した後、新妻に変な性癖を見せるなよ。ドS野郎」
敦也は肩を竦めて返事をし、くるりと回転して、ドアへと向かって歩き始める。