やくたたずの恋
そう思えば、あの海の音が聞こえてくる。悲しみを集めた、逃げ場のない海。
それは、以前のように、志帆が引き起こしたものではない。おそらく雛子が、自ら呼び寄せてしまっているのだ。
「ほら、雛子ちゃん。いよいよみたいだよ」
ゆっくりと迫る波の音に混じって、敦也の声が聞こえてきた。顔を上げれば、ステージの上にいる司会者の姿が見える。
「皆様、宴もたけなわでございますが、今一度壇上にご注目ください。本日のパーティの主催者でございます、近藤商事代表取締役社長、近藤啓介から、皆様にご報告がございます!」
会場が静まり、敦也の父親がステージへと上がる。それを見た敦也は、雛子の手を取った。
「さぁ、僕たちも行こう」
敦也は雛子の手を引き、歩き始める。軟体動物のようにふにゃふにゃで、自分の意志を失った雛子の体は、ただそれに従うだけだった。
それは、以前のように、志帆が引き起こしたものではない。おそらく雛子が、自ら呼び寄せてしまっているのだ。
「ほら、雛子ちゃん。いよいよみたいだよ」
ゆっくりと迫る波の音に混じって、敦也の声が聞こえてきた。顔を上げれば、ステージの上にいる司会者の姿が見える。
「皆様、宴もたけなわでございますが、今一度壇上にご注目ください。本日のパーティの主催者でございます、近藤商事代表取締役社長、近藤啓介から、皆様にご報告がございます!」
会場が静まり、敦也の父親がステージへと上がる。それを見た敦也は、雛子の手を取った。
「さぁ、僕たちも行こう」
敦也は雛子の手を引き、歩き始める。軟体動物のようにふにゃふにゃで、自分の意志を失った雛子の体は、ただそれに従うだけだった。