やくたたずの恋
王子様がいる。その男を見て、雛子はなぜかそう思った。だがこの王子様は、荒くれ者の雰囲気を纏っている、不思議な王子だ。
浅黒い肌の感じや、きりりと締まった目元を見ても、白いタイツにかぼちゃパンツ、という一般的な王子様ではない。荒波を乗り越え、海賊と戦い、ダイオウイカを蹴散らし、愛すべき姫君を探し求める。そんなアクティブで野獣系の王子様としか思えない。
『影山興業』を名乗ってはいるが、この人は一体何者なのか。何をしに来たのか。判断がつかない雛子は、ただ呆然とするしかない。
すると隣にいた敦也が、独り言のように呟いた。
「恭平……どうして……」
「……え?」
雛子の視線は自動的に、男へと向く。この男には髭もない。ヤニ臭さもない。髪だって、下しっぱなしだったおっさんとは違う。ちゃんと上げて整えられえている。
細かなチェックをする雛子の視線に気づいたのか、男は不意にこちらを見た。怯えるウサギに似た丸い目を震わせる雛子に、男は微笑む。その唇の上げ方、眉の動き、優しく緩む目。どれを取っても、全てが雛子の大切な記憶に繋がっていく。
こ、これは……もしかして……。
そう思った瞬間、雛子は「えええええええ!」と絶叫した。
「あ……あれが? あれが恭平さん!?」
浅黒い肌の感じや、きりりと締まった目元を見ても、白いタイツにかぼちゃパンツ、という一般的な王子様ではない。荒波を乗り越え、海賊と戦い、ダイオウイカを蹴散らし、愛すべき姫君を探し求める。そんなアクティブで野獣系の王子様としか思えない。
『影山興業』を名乗ってはいるが、この人は一体何者なのか。何をしに来たのか。判断がつかない雛子は、ただ呆然とするしかない。
すると隣にいた敦也が、独り言のように呟いた。
「恭平……どうして……」
「……え?」
雛子の視線は自動的に、男へと向く。この男には髭もない。ヤニ臭さもない。髪だって、下しっぱなしだったおっさんとは違う。ちゃんと上げて整えられえている。
細かなチェックをする雛子の視線に気づいたのか、男は不意にこちらを見た。怯えるウサギに似た丸い目を震わせる雛子に、男は微笑む。その唇の上げ方、眉の動き、優しく緩む目。どれを取っても、全てが雛子の大切な記憶に繋がっていく。
こ、これは……もしかして……。
そう思った瞬間、雛子は「えええええええ!」と絶叫した。
「あ……あれが? あれが恭平さん!?」