やくたたずの恋
「……では、お嬢さん。あなたはおいくらなら納得するんですか?」
余裕の微笑みで尋ねる恭平に、雛子は「100億です!」と、躊躇することなく口にした。
100万円とか100億とか。とりあえず「100」とついていれば、何となく高額に思える。そんな子供っぽい考えから出た金額だが、雛子は本気の思いを込めて話し続ける。
「100億を、しかも無利息、無期限で! その条件で父に融資してくださるなら、私は喜んで借金のカタになります!」
言ってしまったものの、雛子は内心不安だった。こんな大げさなことを言っても、大丈夫なのか。だが、一度言い出したからには、引く訳にはいかない。
それに、恭平は分かってくれるだろう。自分がなぜ、こんなことを言い出したかを。どんなに酷い父親であったとしても、役に立ちたい。その気持ちは、まだ雛子の中に残っているのだ。
大丈夫。分かった。恭平はその意を表すように、大きく頷いた。
「分かりました。少々お高い金額ではありますが、お安いご用です」
恭平は借用書をしまいながら、壇上にいる雛子の父へと目を遣った。
「横田議員、あなたのお嬢さんは、随分と役に立つお嬢さんだ。あなたのために有利な融資を約束させるなど、大したものです。こんなお嬢さんを『役立たず』などと呼ぶのは、愚か者のすることでしょうね」
余裕の微笑みで尋ねる恭平に、雛子は「100億です!」と、躊躇することなく口にした。
100万円とか100億とか。とりあえず「100」とついていれば、何となく高額に思える。そんな子供っぽい考えから出た金額だが、雛子は本気の思いを込めて話し続ける。
「100億を、しかも無利息、無期限で! その条件で父に融資してくださるなら、私は喜んで借金のカタになります!」
言ってしまったものの、雛子は内心不安だった。こんな大げさなことを言っても、大丈夫なのか。だが、一度言い出したからには、引く訳にはいかない。
それに、恭平は分かってくれるだろう。自分がなぜ、こんなことを言い出したかを。どんなに酷い父親であったとしても、役に立ちたい。その気持ちは、まだ雛子の中に残っているのだ。
大丈夫。分かった。恭平はその意を表すように、大きく頷いた。
「分かりました。少々お高い金額ではありますが、お安いご用です」
恭平は借用書をしまいながら、壇上にいる雛子の父へと目を遣った。
「横田議員、あなたのお嬢さんは、随分と役に立つお嬢さんだ。あなたのために有利な融資を約束させるなど、大したものです。こんなお嬢さんを『役立たず』などと呼ぶのは、愚か者のすることでしょうね」