やくたたずの恋
「でも、将来の夫となる男性が作った会社なのですから、どんな会社でも、文句も言うことなく、勤めてみせます!」
「……今の言葉に、偽りはないな?」
 低く静かな、恭平の声。それは、地獄の門を開くのを確認するかのように響いた。
 地獄だって、気持ちの持ちようでは天国になるに違いない。そんな希望を込めて、雛子は「はい!」と元気よく答える。
「よーし! じゃあ、働いてもらうとするか! おい、悦子。契約書類を用意してくれ」
「か、影山ちゃん、本気なの!?」
「本気も何も、このヒヨコちゃんが言い出したことだろ? 俺はそれに手を貸すだけさ」
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