やくたたずの恋
「悦子、席を外せ」
 恭平はドアの近くで控えていた悦子に、部屋を出るように指示をした。悦子は大きな胸を揺らし、ふん、と鼻を鳴らしてドアから出て行った。
 彼女の残り香が漂う中で、恭平は再び口を開く。
「この『Office Camellia』の派遣社員は、女しかいない」
「それは……昨日見たような、女の人たちのことですか?」
「ああ。逆に、顧客のほとんどが男だ。うちは会員制なんで、会員登録の際には多額の登録料を支払ってもらう。だから顧客は基本的に、社会的地位の高い金持ちばかりだ。そいつらがうちの女たちをレンタルし、一緒に過ごす時間を買う。一時間六万円でな」
 ろくまんえん。雛子は思わず口にする。福沢諭吉が六人、列をなして雛子の頭を駆け回る。
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