やくたたずの恋
 その体へと、恭平の手が伸びてきた。狙いを定めた猛禽類のように、ブラウスに包まれた雛子の胸へと迷いなく辿り着く。そして布越しの感触を確かめるように、彼女の小さな胸を下から持ち上げた。
「うん。触り心地は悪くないな」
「なっ、何を……!」
 雛子は恭平の手から逃れようと、ひたすら体を仰け反らせる。
 リンボーダンスか、それともイナバウワーか。そんな弓形になった体を必死で支えつつ、やだやだやだやだやだ、と心で絶叫する。だが、声にはならない。
 父や親戚以外の男性に体を触られたことなど、ほとんどないのだ。あるとすれば、学校の先生や医者ぐらいなもので、それだってこんな風に胸を揉まれることなどない。あるはずがない!
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