やくたたずの恋
 雛子は体を捩るものの、恭平の手は執拗に胸を撫で回す。柔らかな感触を確かめつつ、狡猾な指が強く引っ掻けば、びくん、と雛子の体が揺れる。感じたことのない甘い痺れが二手に分かれ、頭の先とつま先へと伝わっていく。
 更に何度も指先で刺激されれば、その度に雛子の体がソファの上で跳ねる。恐怖や寒さで起こるのとは異なる、熱く不思議な震え。それが、雛子の心までも乱していた。
 ……これって……一体……。
 その感覚の正体も分からないまま、雛子は背面からソファに倒れ込んでしまった。
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