やくたたずの恋
 考えただけでゾッとする。指先からも血の気が引き、体が一瞬にして冷たくなる。血色を失った白い肌が青くなるどころか、鉛色に変わっていく。そして白い煙の中で消え入りそうになった。
 ……煙? 何でここに、煙が?
 雛子が俯けていた顔を上げると、目の前に恭平がいる。咥えた煙草から煙幕を燻し出しつつ、雛子をじっと見ていた。
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