age
「泣いてるん?」

どれくらい時間がたっただろう。
ふと上から降ってきた声。

見上げると、男がいた。
サラサラの黒髪。
二重の目は、どこまでも透き通っている。詰め襟の学生服を着た男。
というよりまだ少年かもしれない。
あどけなさが残る顔立ちや、まだ広くない肩幅。

「誰…あんた…?」
涙でボロボロの顔で見つめると、彼は一瞬目を丸くした後、ニコッと微笑んだ。

「俺も、あんた知らへん。
でも一人でこんなとこで泣いてるから、なんかあんのかと思ってな。」

聞き慣れない方言。
少年は屈託なく笑った。

「あぁ、これ?俺大阪から引っ越して来てもう1年やねんけど、まだ大阪弁抜けへんねん。まあ、気に入ってるからいいねんけどなッ。
あッ大阪っていうても怖いイメージ持たんといてなッ?
めちゃおもろいとこやねんッ!
道行くおばちゃんの飴の所持率は全国一やッ!」

豪快に笑う少年に私はクスッと笑った。

「やっぱりッ!姉ちゃん笑った方がいいわあッ!」

少年はホッとした顔で私の横にしゃがみ込んだ。

もしかして…

元気づけてくれた?


「こんなとこで泣くなんてよほど何かあってんなあ。どしたん?」

少年はそう言いながら、静かに私の頭を撫でた。
その手がとても、優しくて。

私はなんだか安心して全て話せたんだ。

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