ラヴィ~四神神葬~
 目の前に少年の顔があった。
 白い陶磁の肌にさらりと金の髪が揺れた。耳元にキラリとシルバーのピアスが光る。

 寸でのところで紫乃を受け止めたのは、金髪の少年。

(かっこいい~♡紫乃のタイプかも~)
「どこか打った?」
 自分を凝視したまま時間を止めている紫乃に、一抹の不安を感じ取ったのか、少年が声をかけた。
「ハっ・・・私には卓也先輩という人がっ。あ、あの、全然・・・平気で、その。ぼーっとしちゃって・・・」
「そう?」
(あれ?今、微笑(わら)った・・・?)
 少しだけ口許、上げた気がしたんだけど・・・。
 性懲りもなくまたしても紫乃が見惚れていると、少年が小さく囁いた。
 彼女にしか聞こえない声で。

「気をつけて」―と。

 すぅっ長い指が紫乃の首筋に伸びる。

「肩の髪の毛が・・・」
 大切な人と会うんでしょ。と、にこりと少年が微笑んだ。
「は、はい。ありがとうござい・・・」
「ほら、もう行くぞ」

 ずるずるずる・・・。

 視界から金髪の王子様の姿がみるみる小さくなっていく。見えない力が二人をどんどん引き離していく。

 いや。
 本来はちゃんと目に見える力だ。紫乃以外の人間には。

「あぁ、待ってぇ・・・!」
 待つも何も、移動しているのは彼女自身なのだが・・・。紫乃は総司に引きずられていく。
「まだお礼を・・・」
「いいんだよ、んなもん」
 彼女の様子にただならぬ危機感を感じた総司が、腕を引っ張る。
「卓也の見舞いに来たんだろうが」
「・・・ハっ。そうよ。私には卓也先輩という王子様が・・・!待ってて下さいね、卓也せんぱーい♡」
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