ラヴィ~四神神葬~
「卓也っ」

 腕をすり抜けたかすみ草の花束が床に散らばった。
 かすみ草の白い花に覆い被さるように、紅い薔薇が舞い散る。

 チャリンッ。

 甲高い金属音が響いた。
 紅く汚れた銀の破片がリノリウムの床で光を放つ。

 ぽたり、ぽたり・・・

 ・・・と。

 鮮血の雫が、床に、刃の上に重なり合って波紋を描いた。右手を押さえて、卓也が崩れ落ちる。

 傷口から溢れ出した血が止まらない。

 卓也を支え起こした総司は、一瞬にして血色に染まった床で、鈍く光り輝く銀の刃物を睨めつけた。

 薔薇の花束に隠されていた、カミソリの刃―。

「大丈夫か」
 刃は卓也の掌を深く切っている。動揺を隠せない卓也は小さくうなずいただけだ。
一体、誰が・・・っ。
 総司は眉をひそめた。
「平塚、ナースステーションで卓也の手当てをしてもらえ」
「はい。でも総司くんは」
「頼んだぞ」

 真紅の薔薇を踏みつけた。花束に潜む悪意を―。

 総司は病室を飛び出した。振り返らない。
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