ラヴィ~四神神葬~
 だが思考は寸断された。
 薄幸の少女を彷彿させる、か細い腕からは想像し得ない怪力が、総司の五体を締めつけた。
 憎悪を込め、爪を立てた手が喉輪を掴む。
 息ができない。
 白い手が視界を塞ぐ。
 視覚が閉ざされる。

 ・・・その時だった。
 電流のような刺激が脳に走った。

 これは感情だ。
 精神(こころ)へ鮮烈に流れ込む。

 未練、後悔、怨み、妬み、憎しみ・・・負の思念。

(そう、か・・・)
 覇妖がまだ人間だった頃の、人としての思い。
 直に覇妖に触れたことで感じる。この腕の一本一本が思念体だからだ。

 覇妖は群れを成して、ここに棲みついているんじゃない。この場所に思いを残し、思いは癒えることなく、ここから人がいなくなった後も思いは留まり・・・

 ―彼らは、廃屋の病院から抜け出せなくなった。
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