ラヴィ~四神神葬~
Ⅳ章 太陽の棘
1節
「武居くーん!」
304号室で彼らを待ち受けていたのは、こめかみに怒りマーク全開で、帰りを今や遅しと待ち構えていた紫乃だった。
「卓也先輩に喜んでもらおうと頑張ったのにぃ・・・」
「は?何の話?」
「私のウサギさんりんごです!」
なぜ彼女が怒っているのか?
謎は彼女の次の一言で明らかになる。
「どうしてっ、どうして全部食べちゃったんですかっ」
「・・・もしかしてタッパーいっぱいのあのりんご、俺と卓也の分だったのか?」
「決まってるじゃないですかぁっ」
お見舞いだったら、普通タッパー分けるだろ。
・・・いや、紫乃に常識の話をしても無駄かもしれない。
(ていうか俺、一切れも食べてないんだけど)
大体、あれほど大量のりんごを一人で全部、いくら何でも食べ切れるわけがない。
だから総司はこの部屋の持ち主には無断で冷蔵庫を拝借して、タッパーごとほうり込んでおいたのだが・・・。
ウサギさんりんごは冷蔵庫の中にある。はずが・・・
「あれ?ない」
冷蔵庫は空っぽだ。ウサギさんりんごは、いずこ?
「そのりんごって、コレか」
思わぬ方向から返ってきた声に、総司は振り向いた。
(こいつ、いつの間に)
勝手知ったる、とばかりに他人(よそ)様の冷蔵庫を開けて。
茶髪の少年は琥珀の目で手に持つタッパーをじぃっと見つめると、ここでもまた何の了解もなしにフタを取った。
「あ、私のりんご」
ウサギさんりんごが危ない☆
「・・・あ、食べた・・・!」
紫乃の伸ばした手は虚しく空を切り、りんごはいとも容易く雅樹の口の中へほうり込まれた。
(卓也先輩のりんごが~。卓也先輩、食べてないのにぃ~)
なんでっ。
(会ったばかりのこの人に食べられなきゃなんないのぉ・・・)
部屋には、りんごを噛み砕く音が無情に響く。
紫乃、撃沈。
彼女は二度と立ち上がれまい。
「まあまあだな」という、どうでもいい雅樹の感想が、彼女の深い悲しみに更に追い討ちをかける。
「それで、卓也はどうした?」
『卓也』―!
雅樹の呼んだその名前に、紫乃が過敏に反応した。
304号室で彼らを待ち受けていたのは、こめかみに怒りマーク全開で、帰りを今や遅しと待ち構えていた紫乃だった。
「卓也先輩に喜んでもらおうと頑張ったのにぃ・・・」
「は?何の話?」
「私のウサギさんりんごです!」
なぜ彼女が怒っているのか?
謎は彼女の次の一言で明らかになる。
「どうしてっ、どうして全部食べちゃったんですかっ」
「・・・もしかしてタッパーいっぱいのあのりんご、俺と卓也の分だったのか?」
「決まってるじゃないですかぁっ」
お見舞いだったら、普通タッパー分けるだろ。
・・・いや、紫乃に常識の話をしても無駄かもしれない。
(ていうか俺、一切れも食べてないんだけど)
大体、あれほど大量のりんごを一人で全部、いくら何でも食べ切れるわけがない。
だから総司はこの部屋の持ち主には無断で冷蔵庫を拝借して、タッパーごとほうり込んでおいたのだが・・・。
ウサギさんりんごは冷蔵庫の中にある。はずが・・・
「あれ?ない」
冷蔵庫は空っぽだ。ウサギさんりんごは、いずこ?
「そのりんごって、コレか」
思わぬ方向から返ってきた声に、総司は振り向いた。
(こいつ、いつの間に)
勝手知ったる、とばかりに他人(よそ)様の冷蔵庫を開けて。
茶髪の少年は琥珀の目で手に持つタッパーをじぃっと見つめると、ここでもまた何の了解もなしにフタを取った。
「あ、私のりんご」
ウサギさんりんごが危ない☆
「・・・あ、食べた・・・!」
紫乃の伸ばした手は虚しく空を切り、りんごはいとも容易く雅樹の口の中へほうり込まれた。
(卓也先輩のりんごが~。卓也先輩、食べてないのにぃ~)
なんでっ。
(会ったばかりのこの人に食べられなきゃなんないのぉ・・・)
部屋には、りんごを噛み砕く音が無情に響く。
紫乃、撃沈。
彼女は二度と立ち上がれまい。
「まあまあだな」という、どうでもいい雅樹の感想が、彼女の深い悲しみに更に追い討ちをかける。
「それで、卓也はどうした?」
『卓也』―!
雅樹の呼んだその名前に、紫乃が過敏に反応した。