ラヴィ~四神神葬~
(卓也って、卓也先輩を呼び捨てに)
 いや。呼び捨てくらい、総司だってしているのだが。
(そうだったのね!)

 ―彼は恋のライバル☆

(だからウサギさんりんごを取り上げて、あんな嫌がらせを)
 りんごを食べられて混乱の極みにいる彼女に、まともな思考が残っているわけない。 恋する乙女センサーが危機をキャッチしたのだと、完全に勘違いしている。

「お前・・・」
 紫乃の内心を知らない雅樹が弁解するはずもない。知ったところで、気位の高い彼のことだ。言うわけもないだろうが。
 だが、それでも彼女から感じるものが何かあったのか、僅かに視線をすがめた。
 いや・・・と、雅樹が首を振る。

「卓也はここにはいないな」
「なんで知ってるのっ?」

 それは紫乃以外、誰もいない事実・・・のはずだった。
 ほんの少し前までは。
「卓也先輩が同い年か、ちょっと上の金髪の子と退院したのを知ってるのは、私だけだったのに」
 彼女の悲痛な叫びに、初めて雅樹が反応らしい反応を見せた。

 これで全てのつじつまが合う。

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