ラヴィ~四神神葬~
「さて、これからどうする?」
 抜け殻の病室に差し込んだ陽射しに、雅樹は目をすがめた。

 一刻も早くここから飛び出して、卓也を探しに行くか。
 そんなことをしても無駄だ。
 相手は紫乃とナースを暗示にかけ、退院と称して卓也を連れ去った術者だ。闇雲に探しても見つからないだろう。
(ならば《力》を使うか)
 それでも無理だ。総司の能力では・・・

「この暑さじゃ、俺の《雪》はすぐに解けてしまって探査に向かない」
「だから俺に手伝えと?」
 フッと口許、皮肉に笑んだ。
「断る」
 卓也がどうなろうと知ったことではない。
(あいつを憎んでいるんだ)
 卓也の命を狙っている点では、金髪の少年と同じだ。

「・・・が、このまま奴の術中にはまるのは気に食わない」
 網膜を突き刺す直射日光が病室に飛び込んだ。ブラインドを引き上げ、雅樹が窓を開け放つ。

 パチンッ。

 鳴らした指の先から、光が飛んだ。
(貴様の筋書き通りにいくものか)
 炎天下の空の下で光が弾けた。

「・・・そこか」
 口の端に不敵な微笑を浮かべた。総司、と傍らの少年の名を呼ぶ。
「卓也との別れの時間を惜しむんだな」
「雅樹・・・」
「俺が力を貸すのは、ここまでだ。次は俺が・・・卓也を殺す」
 憎しみは解けない。
 いや、それでも・・・
(どのような形であれ、雅樹は卓也を救うのに手を貸してくれた)
 これは進展と見るべきか。
「ありがとうな、雅樹」
「俺は動きたいように動いただけだ」
 卓也の居所は、雅樹の《光》で把握した。
 総司はきびすを返した。
 ドアのノブに手をかける。
「俺は行く」
 卓也のもとに。
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