ラヴィ~四神神葬~
 頭上を高々と指差した。
 何だ、この音は?
 空が震えている。
 風の音(ね)だ。
 風が騒いでいる。サワサワと微風が流れる。

 いや・・・!

 不意の突風が総司の髪を煽いだ。
 これは、強風。
 ・・・まだだ。
 風が急速に勢いを増す。
 強風が暴風に変わる。
 遥か高み、天空から大地を揺るがす風の渦が落ちてくる。

 なぜ?
 どうして追い払ったはずの気流が舞い戻る?

 ハッとした。
 風向きが変わっている。

 回転だ。

 総司の放った雪を内包したことによって、気流の回転に変化が生じたのだ。
 方向修正を果たした気流が再び地上に戻る。
 天を割り、空を裂き、轟音を上げて大地に落ちる。

 ―彼の捕われている地点に。

「卓也ッ!」

 樹が凪ぎ倒れ、地がもがれる。総司の叫びは巻き上がる砂塵にかき消える。

 ようやく開けた視界の中で、総司は卓也を探した。
 依然、彼の意識は戻らないもののケガは負っていない。
「どうやら、まだ生きているみたいだね」
 シニカルに真が笑った。
「だけど、次はどうか分からない」
 内にどれほど大きな《力》を秘めていようとも、覚醒していない今の卓也は普通の人間だ。さっきのような攻撃をまた受ければ、制限時間の五分を待たずに死が訪れるだろう。
(皮肉にも―)
 気流から卓也を守ったのも気流だ。
(卓也を取り囲んでいた三本の気流の柱が、威力を弱める結果となった)
 総司は拳に爪を立てた。
 同じ攻撃を仕掛ければ、真は間違いなく卓也に跳ね返す。
 真が攻撃に費やす気流を差し引くと、残る気流の柱はわずか二本。卓也の身は今よりも更なる危険にさらされる。
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