ラヴィ~四神神葬~
「武居総司。お前は新田雅樹に仕える参謀であり、そしてオレは大江様に仕える参謀だ。同じ参謀としてオレはお前を評価していた。だが、戦局を見誤ったな」
「俺にはまだ、希望が見えている」
「だったら、その希望を黒く塗りつぶしてやる」
 大気が鳴いた。
 左腕の気流が天に昇る。
 轟音が大地を揺るがした。

 その姿は竜神の如く。

 右の手に気流を束ねる。竜巻をまとった手刀は、一つ間違えば自らの身をも傷つける諸刃の剣になる。
 真は本気だ。

「己の無力さに絶望しろ」
 手刀を振り下ろす。
 破壊力は気流装甲の比ではない。二倍・・・いや二乗―

 ピチャリ、ピチャリ。
 気流に囚われている卓也の頬に、血閃が飛んだ。
 総司の血だ。
 手刀を受け止めた両手が、竜巻に切り裂かれる。大気が悲鳴を上げる。いや、総司の悲鳴だ。
(勝負は既についた)
 真の勝利は確実だ。
(けれどオレの気がおさまらない)

 卓也を救うだと?

 ―なにが人のためだ。

 誰だって自分の身が一番かわいい。お前だってそうだろう?武居総司―
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