ラヴィ~四神神葬~
「このままでは皮膚が裂けて、骨が砕けるぞ。そうなる前に《力》を使え」
「・・・まだだ。・・・まだ・・・」
 気流が肉を斬る。
 痛みは想像を絶する。
 でも、まだ・・・あきらめるには、まだ浅いんだ。
 こんな傷では。

「俺があきらめたら、誰が卓也を救うんだッ!」
 黒瞳が真の双眼を突き刺した。
「あの中で卓也も戦っている。卓也は俺を信じているんだ。絶対にあきらめるもんか!」

 真が後ずさった。
 最早、総司に逆転の勝機はない。勝利は目前だ。
(なのに、何なんだ?)

 じりじりと突き上げてくる、この重圧(プレッシャー)は・・・

(そういう人間臭い感情―オレの一番嫌いなもの)

 感情で奇蹟は起こらない。

「茶番はあきた!非力な信念と共に消えろ!」
 気流が加速する。
 最大級の竜巻がうなり、とどろく。
 真正面から受けた両腕が、鮮血を上げた。
 総司は引かない。
 一歩として苦痛から逃げない。
 この拳が砕かれようとも―
「最後まで希望を、自分自身を信じ抜く」
 気流の斬撃。
 黒髪が乱れ散る。
 拳から血閃がひらぎ飛ぶ。

 空高く・・・

 血飛沫が竜巻の監獄の中の少年の頬を、紅く塗り染めた。

 ―刹那―


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