ラヴィ~四神神葬~
「お前・・・卓也が入院した理由を知ってるのか?」
「当然じゃないですかっ」
恋する相手のことで知らないことなんてない!
一途な紫乃の即答に、総司の鼓動は跳ね上がった。
「りんごむいて、ケガしたんですよね」
「え・・・」
「だからぁ、りんごむいていて手を切っちゃったんでしょ」
「ア、あぁ・・・」
「だからですね。卓也先輩がケガしないように私がむいてあげるんです!」
(それで、りんごにこだわっていたのか)
ほっとしたのと同時に肩の力が抜けた。
紫乃は卓也が入院した『本当の理由』を知らない。ならば後は上手くごまかすだけだ。
・・・と思いきや。
「あぁーッ」
今度は一体何なんだ。耳元で突然、紫乃が声を上げた。
「受け取りましたね」
「え」
「りんご、受け取りましたよね」
迫力にけおされて総司がうなずく。と、にっこりと紫乃。
「じゃ、卓也先輩のお見舞いに連れてってくれますよね!」
脅迫めいた満面の笑みを浮かべている。
―The Love is blind.
〈愛は盲目〉
地で行く彼女だ。
「卓也先輩、何の花が好きかなぁ・・・。もちろん武居くんもお見舞いのお花、一緒に選んでくれますよね」
総司の返事など待っちゃいない。もっとも総司も彼女の随行を断るほど命知らずではないが。
「ところで平塚」
「なに?武居くん?」
先程からずっと引っかかっていることが、一つ。
「どうして卓也先輩で、俺は『くん』なんだよ?」
総司と卓也は同級生だ。つまり一年の紫乃にとっては総司も『先輩』で然りである。
「そんなの決まってるじゃないですかぁ」
天衣無縫の笑顔できっぱり彼女が言い切る。
「愛情のこもっている分、卓也先輩は『先輩』なんです!」
―それは絶対違っている・・・
ガラス越しに仰げば、真夏にふさわしい雲一つない快晴の空。
ウサギさんりんごの入ったタッパーが手の中で重い、夏休みの午後。
思考をむしばむ灼熱の太陽を見上げ、心に落ちた一点の不条理に先行きを思うと、総司の頭はますます重くなるのであった。
「当然じゃないですかっ」
恋する相手のことで知らないことなんてない!
一途な紫乃の即答に、総司の鼓動は跳ね上がった。
「りんごむいて、ケガしたんですよね」
「え・・・」
「だからぁ、りんごむいていて手を切っちゃったんでしょ」
「ア、あぁ・・・」
「だからですね。卓也先輩がケガしないように私がむいてあげるんです!」
(それで、りんごにこだわっていたのか)
ほっとしたのと同時に肩の力が抜けた。
紫乃は卓也が入院した『本当の理由』を知らない。ならば後は上手くごまかすだけだ。
・・・と思いきや。
「あぁーッ」
今度は一体何なんだ。耳元で突然、紫乃が声を上げた。
「受け取りましたね」
「え」
「りんご、受け取りましたよね」
迫力にけおされて総司がうなずく。と、にっこりと紫乃。
「じゃ、卓也先輩のお見舞いに連れてってくれますよね!」
脅迫めいた満面の笑みを浮かべている。
―The Love is blind.
〈愛は盲目〉
地で行く彼女だ。
「卓也先輩、何の花が好きかなぁ・・・。もちろん武居くんもお見舞いのお花、一緒に選んでくれますよね」
総司の返事など待っちゃいない。もっとも総司も彼女の随行を断るほど命知らずではないが。
「ところで平塚」
「なに?武居くん?」
先程からずっと引っかかっていることが、一つ。
「どうして卓也先輩で、俺は『くん』なんだよ?」
総司と卓也は同級生だ。つまり一年の紫乃にとっては総司も『先輩』で然りである。
「そんなの決まってるじゃないですかぁ」
天衣無縫の笑顔できっぱり彼女が言い切る。
「愛情のこもっている分、卓也先輩は『先輩』なんです!」
―それは絶対違っている・・・
ガラス越しに仰げば、真夏にふさわしい雲一つない快晴の空。
ウサギさんりんごの入ったタッパーが手の中で重い、夏休みの午後。
思考をむしばむ灼熱の太陽を見上げ、心に落ちた一点の不条理に先行きを思うと、総司の頭はますます重くなるのであった。