ラヴィ~四神神葬~
 エレベーターのボタンに少年が触れる寸前、ササッと動いた人影が先にボタンを押した。
 気付きもしなかった気配はしかし、見覚えのある人物のものだ。
 チッと少年は舌打ちした。
「待ち伏せとは趣味が悪いな」
「情報提供者としては当然だと思うけどね」

 チリン、とブレスレットの鈴が鳴った。

「知る権利くらいあるだろ?」
 金髪の少年がフッと笑う。
「新田(にった)雅樹(まさき)は存外の臆病者だったと、我が主に伝えておくよ」

 ドンッ、

 と雅樹が秀麗な少年の顔の真横に勢いよく手を突いた。
 琥珀の双眼が威圧する。
「ケンカを売るのなら買うぞ」
「会いもしないで逃げ帰ってきた負け犬がよく言う・・・」
「想いなら伝えた」
 クスリと笑った少年の吐息が雅樹の前髪を揺らした。
「花で心が伝わるなんて楽なものだな」
 パシンッと腕を払った少年の口許から笑みは消え、挑む目つきで雅樹を睨めつける。
「ケンカするなら相手を選べよ」
 一触即発。
 無言の重圧が二人の間を巡る。雅樹もここで引く気はない。眼前の少年を針の視線で突き刺す。
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