ラヴィ~四神神葬~
 エレベーターの到着を待たず、雅樹は非常階段に向かって歩き出した。
「待てよ」
 声と同時にヒュンッと何かが空を切った。
 背後から投げつけられたソレを後ろ手で雅樹が受け止める。大きさは小石くらいだ。

「俺達は敵同士だろう」
「決まってるじゃないか」
 僅かに振り返った雅樹に、少年はフッと口許を上げて見せた。
「だからソレをあげたんだよ。次に会う時は敵としてお前を討つから。束の間の休戦記念といったところだ。・・・安心しなよ。ソレはオレの個人的なプレゼントであって、我が主―大江(おおえ)様とは何ら関わりない」
 だったら尚更受け取れるか!と雅樹は思う。

 手の中の血色の瑪瑙(めのう)を突き返そうとした瞬間、とんでもない言動が飛び込んできた。

「プレゼントだなんて贈られる筋合いないって顔してるけど、オレも『貢ぐ男』ってのを体験してみたかっただけだから、気にしなくていいよ」

「~~ッ。誰が貢いでるっていうんだッ!」
「あれ?自覚ないんなら・・・まぁ、いいけど」

 全く何もよくない。
 冗談じゃない。
 おまけに瑪瑙を返すタイミングを完全に逸してしまったし。

 乱暴に瑪瑙をポケットに突っ込んで、雅樹は非常階段を下りる。イラ立つ感情を胸に抱えたままで・・・
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