恋が始まるいっぽ前!
「……せ、先生こそ、こんなところで油売ってる場合じゃないですよね?もっと他にやるべきことがあるのでは?」


私は負けじと……、言い返す。


「…息抜きだよ、息抜き!肩の力抜かないと…、出来る仕事も出来なくなるからな。」


「………。結構毎日ここに来てませんか?息抜きしすぎでは?」


「…………。」


途端、ニシハルはじーっと私を見つめる。


「……そう言うお前は、何でそんなこと知ってんだよ?」


「………!」


しまった!

これじゃあ見ていたことバレバレじゃない。



いやいや、ここは平常心で……



「……ゆ、友人から聞きました。」


「…ふ~ん、友人ねぇ…。」


ニヤリと笑うニシハル。


……ハッ!


私の友人って言ったら…。
莉奈ちゃんだってバレてしまうではありませんか…!



「……。まあ、三船も頭ばっか使ってないで、お前もたまに体動かしたら?勉強詰めの息抜きに。」



彼はよいしょ、と立ち上がると……

私の頭に、何かをフワリと乗せて、


「……俺よりすげー汗。ついでだし拭いとけ。」


そう言って。

私の頭を…、わしゃわしゃと乱した。



「……あ。そのタオル、あそこの生徒に返しておいてくれ。」


「……は?」


なんですと?


「…お前が言うようにやるべき仕事が山積みだから…職員室に戻るわ。……じゃーな。」



タオルを頭に乗せたまま。私はポカンと…その場に立ち尽くす。


これは…、いいように使われた?

てか、ちゃっかり女子生徒から逃れた?!


「ちょっと~、何で三船さんが私のタオル被ってんのよ。」


タオルの持ち主がずかずかとこっちに向かってくる。


「……え。…あ、ハイどーぞ。」



でも。
その前に……。



手にしたタオルを鼻に近づけて……。
ちょっぴり深めに息を吸った。

男の人の汗の匂いに…ちょっとだけ、めまいがしそうになった。
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