恋が始まるいっぽ前!
先生は…、莉奈ちゃんがここにいない理由を知ってる癖に。

私の行動にも…気づいているはずなのに。

深く…、追求など…しない。


「先生が…、悪いんですよ。あんなことするから。」

「…あんなことって?」


「抱き合ってたじゃない。」


「……。それが…、太田に何か関係あるのか?」


私は黒板に爪を立てると…。

横一線。

ギィ~っと音を立てて……引っ掻く。



クラスメイト達は悲鳴を上げるなり、耳を塞ぐなどして…一気に騒ぎ立てた。


なのに、ニシハルは。
平然として、私を見ている。


「…莉奈ちゃんは、先生のことが好きだったんです。」


「………。」


「まるで関係ないって顔ですね。」


「……いや……。」


「…予想していませんでしたか?」


「さあ…。」


「つまりは…、彼女の想いには気づかないフリをするんですね?」


「惜しいけど…。ちょっと違うな。」


「……え?」


「本当に好きなら、ちゃんと本人の口から伝えるべきだ。」


「…………。」


「…それができないのは…、結局、一過性の恋だから。この狭い空間で…、憧れを恋と勘違いしてる。簡単に諦める程度の…、時が過ぎれば忘れるくらいの、ちっぽけな。」


「…………。」


「…ちゃんと伝えてくれれば……、ちゃんと振ってやれるのに。教えてやるよ、こういうのは…恋じゃないって。」


そう言って、ニシハルは…、私が書いた解答に

赤いチョークで、大きく丸をつけた。



「……やればできんじゃん。」


あくまでも…、

ポーカーフェイスは崩さない。



「やる気になれば…、こんなもの、どうとでもなります。でも……!人の気持ちは、そうも行きません!」


怒りと…モヤモヤとした感情をぶちまけて。

教卓の上に、ノートを叩き置くと……。



廊下へと…、飛び出す。


どうして私が…こんなにイライラするのか、訳も分からないままに…。
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