ワガママ狼男と同居始めました。
「おかえり。紅葉。」
家に帰ると、門の前で小野寺くんが待ち伏せしていた。
「……紅葉って呼ばないでよ……。」
「んで、今朝の話。いい?」「だめ!」
「あぁ!?何でだよー!」
「男女が同居とかあり得ないでしょ!
あんたはあんたの家に住めばいいじゃん!」
「ないよ……。」
「…………。」
ないってどういうこと?
真意を探るべく、小野寺くんをまっすぐ見る。
「俺達狼人間は普通、昼は人間、夜は狼の姿になる。
昼に狼、夜に人間になろうとすると、普段よりずっと多く体力が削られる。」
「狼人間ってもっと半分人間、半分狼みたいなのだと思ってた。」
「ま、フツーはそう思うわな。
んで、住んでたところがペット禁止なのに、
犬がいる、って噂が立っちゃって、管理人が俺の部屋来たの夜でさ。
人間になれるほど体力残ってなかったから、結局追い出されたわけ。」
「…………。」
「だからもうあそこには帰れない。家族もいない。」
「別に私の家じゃなくても、新しくアパート借りればいいじゃん。」
「金ない。」
……だからってねぇ……。
「……じゃあ分かった。泊めてくれるならお礼にキスしてやる。」
「なっ!!!」
「ふざけんな!!!!」
私は家のドアを思いっきり閉めて、鍵をかけた。
外から少し声が聞こえたが、聞こえないふりをした。