ワガママ狼男と同居始めました。
「……紅葉…………」
志木が座り込む私に駆け寄った。
右手だけでなく、目も鋭く光る狼のものになっていた。
「……大丈夫か……?」
「……っ……」
志木の温かい手に触れ、自然と涙がこぼれた。
「……怖かったっ……。」
志木は私を抱きしめ、「ごめん」と小さな声で言った。
「……最近は満月の日に曇りが続いてたけど、平気だったから油断してた。
立ってるのも辛くって、お前にきつく当たるつもりじゃなかったんだ。」
「……ん…………」
「……帰ろ?」
もう日は暮れていた。
月は見えないけど、志木の髪は少し伸びて、左手も狼のものになっていた。
志木の背中におぶさり、柔らかい髪に頬をつけた。
私達は、軽快に屋根から屋根へと飛び移り、暗闇の中を駆けていった。