ワガママ狼男と同居始めました。
志木side
紅葉は俺の背中でしばらく泣いていたが、家につく頃には泣き止んでいた。
こんなに毎日泣いていたら、顔の形も変わってしまう。
とうとう他人に見られてしまった。
脅しはしたけど、警察に通報されたら終わりだ。
紅葉も巻き込むことになる……。
鏡を見ると、すっかり伸びた前髪の隙間から鋭く光る目が覗いていた。
「……紅葉、風呂先入っていいぞ。」
「……うん……。」
紅葉があんなことになったのは、自分の体調も把握してなかった俺のせいだ。
待ち合わせも、学校ではあいつと話せないから、話す口実が欲しくて計画しただけだ。
学校で俺に話しかけられた時のあいつの反応が面白いから、近づいてみたかっただけだ。
別に本当に待ち合わせして帰ろうなんて思ってなかったけど……。
紅葉が風呂から出てきて、ソファーの上の俺の隣に座った。
「……人に見られちゃったね……。」
「……だなー……。」
「……もし警察とか変な研究者とかが来たらどうする?」
「……丙のいる山に帰るしかないな。
お前も、あの学校にはいられないな。ごめん。」
「……もしそういう人達が来たら、私も一緒に逃げてあげる。」
「……え…………」
紅葉はさっきまでべそを掻いていたとは思えないくらい、明るく笑った。