ワガママ狼男と同居始めました。




紅葉side



丙さんの爪が首に食い込む。

「やめろ!そいつは関係ない!!」


「関係あるさ。こいつはヒトだ。」


「……でも…………。」




「……それにお前……ずいぶん辛そうだな?

夜にヒトの姿を保つのも苦労するようなやつに、ヒトの世は生きていけんよ。」


「……っ…………」




志木…………。

もしも志木が山に帰りたいなら私には止められない。


でも、もし、人間の世界で、私の家で暮らしたいのなら……。




志木と目があった。

悲しそうな目だけど、丙さんでもなく、丁さんを想うでもなく、私をまっすぐ見ていた。

分かったよ。

志木。



志木に目でサインを送る。

信じてるよ。



私は足に力を込め、屋上から飛び降りた。






< 80 / 243 >

この作品をシェア

pagetop