ガラスの靴はきみのもの
「……」
思わず、絶句。
……朝って、今日の朝?
今日の朝ここに来るの?
もう一度目覚まし時計を見ると、時刻は6時10分過ぎ。
今ってもしかして、もしかしなくてもちょうど、巷で言うところの朝、 ――
「うわあっ!」
ぎゅうっと握りしめていた携帯が突然鳴り出し、過剰なまでに肩が跳ねた。
その画面に表示された名前は、思った通りの『岸本一瑠』。
……何これ怖い!
「も、しも……」
「開けて。今ロビー」
私が電話に出たのとほぼ同時に、一瑠の珍しく不機嫌な声が鼓膜に響いた。これは確実に怒っていらっしゃる。
……彼の剣幕にたまらなく恐ろしくなってしまった私は。
「はい、ただいま……」
マンションのロビーのドアのロックを、やむなく解除する羽目になった。
私の住む部屋まで上がってきた岸本一瑠に、玄関のドアを開けた途端に抱きすくめられたのは、まだ目が覚めてから15分と経っていない頃。
部屋着を着たまま、しかもノーメイクで髪もボサボサなまま。今を時めく人気俳優にぎゅうぎゅうされている私は、はたから見ればたいそう滑稽なことだろう。……ああ、大変だ。
「いちる、こんなとこでこんなことして撮られたりしたら、」
「撮られねーよ黙っとけこのアホ!」
「……ごめん」
こんなのおかしい。どうして私が謝らなきゃいけないの。
私はただ、きみを心配して、