ガラスの靴はきみのもの
 


「……あいたいなあ」


わかっていることは。


――会いたい。

そう思っても簡単に会えないくらいには、彼は遠くなってしまったということ。







アクターズスクール時代に出会った岸本一瑠という同期生は。
顔は整っているけれど演技に関してはこれといって秀でたところのない、いまひとつ抜きん出きれない男だった。

……それなのに、どこか魅力がある人だったように思う。


周りはすべてライバル、蹴落とし蹴落とされ、埋もれてしまったら負け。
そんなシビアな世界に生きながら、それを特に気にする様子もなく。ただにこやかに、飄々と、我が道を突き進んでいく。


自分に限界の線は引かない。
できるだけ頑張るのではなく、できるまで頑張る。


彼はそういう人だった。

自分のことはそっちのけで、私がずっといちばん近くで見続けていた岸本一瑠は、どこまでもそういう男だった。



だから、



『ようこそ僕のシンデレラ。――さあ、舞踏会の始まりだ』



――その名も、『シンデレラ・ナイト』。

地味で冴えなくて不幸続きなヒロイン・幸恵が、岸本一瑠扮する謎の男・シロガネと出会い、美しく変身していきながら人生を変えていく。
簡単にまとめると、そんなサクセス・ラブコメディ。


 
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