性悪シンデレラ-顔がよければ性格がいいわけじゃない-
しかし、仮にも一国の王子。今此処で背負い投げをかませば即刻牢屋行きです。
シンデレラはグッと我慢しました。
(早く12時になりやがれクソ野郎っ!)
そう胸の内で暴言を吐きながらも表情はにこやかなまま踊り続けるシンデレラ。
そして、ようやく待ちに待ったお城の鐘が12時を告げ辺りに鳴り響きます。
「王子様、私はもう行かなければいけません。さようなら」
棒読みで王子様に言い放ち、手を振り払って背中を向けるとドレスをちょこんと両手でつまみながら走り出します。
「待ってくれっ!せめて名をっ!」
(悪いがお前とはもう会うことないだろうしな、名乗るつもりはねぇよ)
シンデレラはササッと素早い動きで階段を駆け下ります。ですがそこで片方のガラスの靴が脱げてしまいました。
「チッ」
周りに聞こえないように小さく舌打ちすると、ガラスの靴を諦めてまた駆け下り、かぼちゃの馬車に乗って猛スピードでお城を去りました。
家に戻ったのと同時にボンッと破裂音が響き、シンデレラと馬車は元の姿に戻ってしまいました。
そして、かぼちゃはそのままに野良犬と野良兎は逃げていきました。
「あーくそ、夕飯がっ!」
恨めしそうに二匹が逃げた方向を睨みつけますが、もう追うほどの体力は残ってなくふらついた足取りで家の中に入り、すぐさまベッドで眠りにつきました。