四季。姉の戻らない秋
そして、彼はやってきた。
去年とおなじ干し梅を持って。
その日は休日で、昼過ぎには来ると言っていた彼を父も口には出さなかったけれど待っていた。
姉と向き合う彼の背中に父は言った。
『四季をいつまでも想ってくれてありがとう』
彼は振り返らずに呟いた。
四季を忘れるなんてことは一生ないと思います。と。
そしてゆっくり振り返り続けた。
『亡くした人を想って心が痛まない日は、一生こないです』
彼のひたむきな素直さが、両親には心の救いだったと思う。
わたしには彼の言葉が胸に刺さって、息を飲むほど痛かった。
救いの去った家のソファーで、父と母は2年ぶりに手を繋いでいた。
それを見たわたしは、なにも言わずに自室に戻った。
寝転んだベッドの上で、階下をひしめいていた歪みが埋まっていくのを感じていた。