四季。姉の戻らない秋




それでもわたしは知っていた。

今でも洗濯機の音に紛れて、泣いている母を。

眼鏡に疲れたフリをして、滲む涙を誤魔化している父を、知っていた。







『暦。四季のお花の水、変えといてちょうだい』

休日にソファーで寛ぐわたしに、庭の手入れを終えた母が当たり前のように言った。

それは、ちょっとこのゴミ捨ててきてちょうだいと言うみたいな感覚で。

彼が来た日から1つ季節の過ぎた、春の頃だった。


姉の遺影をじっと見つめる。

姉の成人式の前撮りで撮ったその写真は振袖姿で、華やかな衣装に笑顔が映えていた。

『写真送ったら平良がめずらしく可愛いって言ってくれたんだ!』

心の底から嬉しそうな笑顔で、姉のために仕立てられた袖の袂を振り乱していたのを思い出す。

それなのに式を迎える1ヶ月前に姉は死んだ。


…姉は死んで幸せなのだろうか。




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