四季。姉の戻らない秋




遺影の前に置かれた腕時計に目をやった。

成人式の当日にもしていけるよう、前祝いとして両親が贈ったものだった。


針は意味のない時間で止まっていた。

『こよちゃん、見て!可愛くない?なんか大人になったって感じだよね!』

喜びをありのまま伝える笑顔は、確かに本物だった。


…姉は本当に…死にたかったのだろうか。


『おやすみ、こよちゃん』


水の入った花瓶は割れた。

わたしが投げたから。


その音を聞き付けた母がわたしの名前を叫び駆け寄り、暴れようとする私の身体を細い腕で抑えた。

母はごめんねと言いながらわたしにまわす腕の力を強くした。


わたしはそれが嫌で堪らなくて、振り解こうともがいた。

もう、限界だった。



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