四季。姉の戻らない秋
「ありがとう。すぐ着替えてくるね」
母の了解の返事を背に、くぐったばかりのリビングのドアを戻った。
階段を上がった正面にあるのが自室。
それを除いた残り2部屋は、本人不在のためなんの気配も感じない。
わたししかいない2階は、とても静かだ。
ラフな部屋着に着替えて階段を下り、洗面所で手を洗う。
夏が息絶えて冷たくなった水道水が、家の中に秋を知らせていた。
「あー。おなかすいた。いただきまーす」
偶数あるダイニングチェアの母の向かいのイスに座り、わたし専用のオレンジ色の箸を持つ。
目の前の母も斜め向かいの父も、わたしに続いて、いただきます。と言った。
「ん、美味しい」
テーブルの上には大きな寿司桶とシーザーサラダ、唐揚げとわたしの好きな大根の味噌汁が並ぶ。
以前はサビ抜きの小さな寿司桶もその中に置かれていたけど、今はもうその必要はなくなっていた。