四季。姉の戻らない秋
恵まれていたと思う。
わたしも、姉も。
大好きな家族がいて、友達がいて、毎日笑って。
少なくともわたしはそう感じていた。
…でも、姉は違った。
わたしが気付いたときには既に姉の腕にはリストカットの痕があって、両親がわたしに打ち明ける前から姉と母は時折2人でどこかに出掛けていて、わたしはその行き先がどこかの病院なのを知っていた。
真夜中にとなりの姉の部屋から聞こえる壁になにかを叩きつける音や、大きな声。
次の朝に見るどこか焦点の合わない姉の視線と、作った笑顔。
家の中でも袖の長いものしか着ない姉のカーディガンの裾から見えた白い線に、大好きな姉はきっとどこか正常じゃないと、当時ランドセルを背負っていたわたしにもわかっていた。
なにも言わない母のとなりでわたしの目を見据えながら父が姉の自傷癖の話をしたのは、わたしが中学校に入学して間もなくのことだった。