四季。姉の戻らない秋




みんなと言ったわたしの頭のなかには誰の顔も思い浮かばなかったのに、会えばきっと話に花は咲くのだろう。

人間なんて、そんなものだ。


「おめでとう、暦」

小さな拍手につつまれながら2と0の形のロウソクの火を吹き消した。

「うん、どんなときでもケーキは別腹だよね」

大好きなカフェコムサのタルトケーキに立てられている不要になった赤とピンクのロウソクを取り払い、母が切り分けるのを待つ。

以前は祝う側の誰かが写真を撮ったりしていたけれど、その習慣はもう途絶えていた。

各自、似たり寄ったりの理由で。


「暦。これ、お母さんとお父さんからプレゼント」

「わー。ありがとう!」

父からラッピングされたショッパーを受け取り、早速中身を拝見する。

リボンにくるまれた箱。

躊躇いなく解いた。


箱の中身はシルバーの華奢なベルト、小さな文字盤…。


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